コロナ禍と議会


新型コロナウイルスへの対応で、各都道府県の知事がクローズアップされています。遅い、まずい、意味不明と3拍子揃った国の対応に比べ、スピード感を持った対応という印象も強いのでしょうか、個々に詳しく見ていくと???というようなこともあるんですが、何せ相手の力がなさ過ぎる分、知事の手腕が際立っている感じもあります。まあ、中には評価がた落ちの知事さんもいらっしゃいますが……。

知事のことはさておき、議会です。知事が前面に立って成果を出しているのに比べ、どうも冴えません。議員さんも、それぞれ現場の大変な状況を把握して、行政のほうに改善を求めたり、いろんな相談事に乗ったりして、それは大変な日々を送っておられるとは思いますが、聞こえてくるのは、一般質問を取りやめたとか、議会の日程を縮めたとか、議員報酬をカットするとか、そんな話題ばかりです。もちろん、まさに有事下ですからやむを得ない面もあるのでしょうが、そんな話題ばかりを聞かされていると、何となく「議会不要」というところに行き着くような危険な香りがしませんか。

問題は、法律の作りにもあるのかもしれません。今年3月に改正・成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法では、確かに知事にはいろんな権限が与えられていますが、議会には何の権限も与えられていません。唯一、「都道府県知事は、都道府県行動計画を作成したときは、速やかに、これを議会に報告し」との条文があるだけです。

そういうベースがあって、実際に行政側の職員は緊急事態への対応に忙殺されている中、議会としても余り職員に負担をかけないようにしようという「優しさ」が、前述のような一般質問取りやめとか日程短縮といったことになってくるのでしょう。しかし、これは一歩間違うと、最初に述べたように「議会不要」論に直結してくる問題ではないかと心配しています。

一般質問とは、その地方公共団体の事務について公の場で質問することができるという、議員にとってはとても重要な権利です。選挙で選ばれた議員でないと、議会の議場で、直接、知事や市長に対して質問をぶつけることはできません。どんなに社会的地位が高い人でも、お金を持っている人でも、運動能力に長けた人でも、選挙で議員として選ばれない以上、あそこで質問はできないわけですね。さらに、議員の質問は、その議員を選んでくれた多くの人を代表して行われるもので、決して個人的な興味や思いつきのようなものではありません。どうしても議政壇上で直接質しておかねばならない問題を厳選して質問する、それほど重要なもので、本来はあるべきです。

確かに、大変な事態であるのは分かります。東日本大震災のように、津波でハードもソフトも壊滅的な状況になってしまっては物理的に議会が開けないというようなこともあるでしょう。今回のコロナ禍も、最前線の保健所やそこと密接に関係する健康・福祉関係の部局、あるいは商工、教育などの関連する部局では、職員は忙殺されていることでしょう。しかし、自治体の規模にもよりますが、部局によってはそこまできりきり舞いではないというところもあるはずです。もちろん、不要不急の類いの質問はご遠慮願いたいとは思いますが、緊急かつ必要な質問があるのなら、ちゃんと質すのが議員の責務だと思います。

以下、かなり本音の部分になりますが、従来、一般質問といっても、ほんんどは単なる報告や自説を延々と延べるだけのようなもの、事前に完璧な打合せが出来上がっている学芸会のようなもの、本会議で大勢の人を集めた前でわざわざ聞くほどのものではないもの、そんなもので埋め尽くされてきた一般質問なら、やはり「取りやめ」というような議論は起こってくると思います。かといってガチンコでやり過ぎて、しょっちゅう議論がストップしてしまうようでは困りますが、案外、このコロナ禍への対応がその議会の本質を表すことになるのでないかというような穿った見方もしています。まあ、どういう対応をとるにせよ、この機会に、議会での質問の在り方、その重みについて、再検討・再認識することも大切なのではないでしょうか。

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