本会議場で居眠り

2023年7月14日のテレビニュースで、大阪府の八尾市議会で副市長が居眠りをしていたとして問題にされていました。御本人はインタビューに対して苦しい言い訳を述べておられましたが、この例に限らず、居眠りはあちこちの地方議会でも見られる光景だと思います。そういえば、それが元で市長と議会の泥仕合みたいになったり、傍聴規則を変更したりしたところもありましたね。

国会では、河野大臣が議場での居眠りについて耳を疑うような言い訳をしていらっしゃったこともありましたが、なぜそれほど居眠りが起こるのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。

まず考えられるのは緊張感の欠如でしょうか。人生で初めて議場に入るときに居眠りをする人は余りいないと思いますが、慣れてくると、議会の大体の流れが分かってきて、緊張感も少し薄らいでくるのではないかと思います。特に、本会議では、誰が発言するかがあらかじめ分かっていることが多いので、その日に発言予定のない人は、ただ聞いているだけなので、睡魔に襲われてしまうのでしょう。

本会議中は会議に集中しないといけないことは言うまでもありません。そのため、関係のない書物などを持ち込んで暇を潰すこともできません。最近はタブレットが導入されつつあるので、それでいろいろ見ることができる場合もあるでしょうが、あくまでも議題に関係することだけで、それ以外のものを閲覧しているとまた物議を醸すことになりかねません。

ということで、基本的には、その日に発言の予定がない人は、かなりの長い時間ずっと「ただ聞いている」状態が続きます。その場合、自分にとって余り興味のない分野の話だったりすると、余計に緊張の糸が切れやすくなるのだと思います。

その議会が全く凪状態の場合は、さらに緊張感が抜けていきます。議案の採決で拮抗しているとか、議事進行発言がいつ飛び出すか分からないとか、そういうことなら常にぴりぴりしていなければなりませんが、そういう要素が全くないと完全に気が緩んでしまう人もいるのでしょう。

午前2時間、午後3時間と連続して議場に入っていると、さすがに眠気が襲ってくるときもあります。でも、いろんな事態を想定しながら緊張した気持ちでいると、眠気は起こりません。もちろん、無呼吸症候群など身体的な問題がある場合は別ですが、普通の状態であれば、眠くなるかならないかは、早い話「気持ちの問題」なんですよね。

学芸会のように思えてしまう原稿の朗読合戦であっても、その発言の内容によっては後に大きな問題となることもあり得ます。そういう一言を絶対に聞き逃さないつもりで聞いていれば、決して眠くはならないものです。まあ、中には「もうやめてくれ」というほど詰まらないものもあることはありますが、大抵は、じっくり聞いているとそれぞれ大事な内容が話されています。しかも、それはリアルタイムで全世界に発信されているわけです。

一番厄介だと思うのは、同じ内容の質問が繰り返されるときでしょうか。A議員が尋ねたのと同じことをB議員が尋ねることがあります。そして答えるほうも、A議員に答えたことと同じ内容をB議員にも答えます。これは聞いていて面白くない、というか、聞いている人をばかにしていると思います。そんな場合は、B議員は「先ほどA議員が質問したので省略します」とか、答えるほうも「先ほどA議員にお答えしたとおりです」と、さらっと流してほしいものです。

議会を傍聴している人も、そんな同じ内容のやり取りが繰り返されたのではたまったものじゃありません。「傍聴者をばかにしているのか?」とか「この人たちは頭が悪いのか?」と思われかねません。よく「議事運営は自治会の役員会の運営と同じ」と言われますが、役員会でAさんが会長に質問したことと同じことをBさんが聞いたら、「さっき話しただろう。聞いてなかったのか」となりますよね。

ただでさえ、議会の会期中、しかも本会議の日しか議員は仕事をしていないなどと誤解されがちな地方議会。せめてその短い時間だけでも、意地でも集中しましようよ。何が飛び出すか分からない委員会で寝る人はほとんどいないと思いますが、本会議は後がないということで、それより真剣勝負の場なのですから。