都道府県議会制度研究会報告書(3)その2


前回は一般再議についてでしたが、今回はもう1つのほうの特別再議についてです。一般再議の場合は、首長の意思で再議に付すかどうかを決められましたが、この特別再議に当たるものは、首長は「再議に付さなければならない」と、義務規定になっています。

この特別再議にも幾つかのパターンがあります。
まず1つ目は、議会が議会の権限や法令等に違反した議決・選挙を行った場合です。例えば、除斥すべき議員を除斥せずに採決を行ってしまったとか、そういう類のものですね。これについて報告書では「議決の意思決定を覆すための基準を明確にする必要がある」との提言がなされています。案件によっては違法なのかどうか微妙なこともあるので、その辺について客観的に判断できるような明確な基準を示してくれということですね。

あわせて、再議でやり直しても、上の違法等の状況が変わらなければ総務大臣に審査申立を行う規定となっているのを、総務大臣をすっ飛ばして直接裁判所に出訴できるようにしてくれという提言です。この辺、私はいまいちぴんときていませんが、まあ、千代田区議会の不信任・解散のドタバタ劇を見ていると、そのほうがいいのかなとも思いますね。

パターンの2つ目は、義務費を削られる議決をされたときです。義務費とは、法律などで当然負担しなければならないことになっている経費のことで、それを削除・減額された場合です。これは再議で議会が同じ削除・減額の議決をしても、首長はそれを無視して予算計上し、その経費を支出できるとされています。それなら何のために再議するのと思ってしまいますが、報告書でも「議会の予算議決権を一方的に否定するものなので廃止せよ」と言っています。

パターンの3つ目は、2つ目と同じ予算の減額の問題ですが、「非常の災害による応急・復旧施設のために必要な経費」と「感染症予防のために必要な経費」が削除・減額されたときです。この条項は他とは大きく性格が違っていて、再議で議会が同じ削除・減額を議決したときは、首長はその議決を自身に対する不信任議決とみなし、自ら辞職するか議会を解散することになります。

災害や感染症対策で緊急に予算が必要というとき、それを認めてもらえないのは不信任と同じだという考え方なのでしょうが、新型コロナウイルス感染症に関する国の不可解な補正予算を見ていると、何でもフリーパスというわけにはいかないような気もします。報告書では、災害時などに議会が解散されると、すぐに選挙が行えないので議会が構成されず、全て首長の専決で行われることとなるが、それは災害時の議会の役割を放棄させるものなので廃止すべきである、ということです。

再議決はいずれも過半数議決ですので、1つ目の法的なミス(単純ミス)の場合以外は、再議で結論が変わる可能性は低いのではないかと思います。だとすると、パターン2と3の再議は、私も不要じゃないかと思います。

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