都道府県議会制度研究会報告書(5)
提言の5つ目は、専決処分の対象から予算、条例案を外せというものです。
専決処分とは、地方自治法に規定されているもので、議会の議決を経ることなく、首長が自分の判断で予算や条例の制定などを行うことができる制度です。ただし、フリーパスでできるわけではなくて、緊急に対処する事態が起こったのに議会を招集する時間的余裕がないときなどの条件があります。
ところが、もう10年ほど前になりますが、鹿児島県阿久根市で市長と議会が対立し、ものすごく混乱したことがありました。詳細はウィキペディアに譲りますが、結果として、市長は議会を招集せず、全て専決処分で自分の思うように決定していきます。当時の法律では、そういう異常事態は想定外のことで、言わば打つ手なしのような状態に陥りました。
その反省から地方自治法は一部改正され、議会運営委員会で決定して首長に臨時会の招集を請求し、20日以内に首長が臨時議会を招集しないときは議長が招集できることになりました。そのほかにも若干の法改正が行われていますが、その辺、詳しくは地方自治法第101条を御覧ください。
そのようなことで、10年前よりよくなったとはいえ、予算や条例案は、やはり地域の住民に直接関わる重要な案件です。それをいまだに議会の議決なしで決定できるとされている専決処分の規定は、議会が本来持つ議決権から考えても問題があるということで、それを専決処分の対象から外してくれということです。
まあ、地方自治法が制定された昭和22年と今とを比べると、交通・通信事情は全然違いますから、その気になればいつでも議会は招集できますよね。何日もかかる郵便で招集通知を送って、その到着を待って、それからよっこいしょと議員が集まってくる、その間に時機を失してしまうということは、今ではほとんど心配する必要もなくなってきています。ならば、首長1人に大きな権限を与えてしまう専決処分の対象から、その2つを外すという考え方は理解できます。
なお、専決処分の規定は地方自治法第179条です。