「発言取消」を考える(3)
では、「発言取消」が規定されている会議規則について少し考えてみたいと思います。例えば、都道府県議会標準会議規則は昭和31年にできていますが、当時はどんな時代だったのでしょうか。
終戦後約10年、ウィキペディアで印象的な出来事を少し拾ってみると、
●「週刊新潮」が創刊。
●日本で水俣病第一号患者を公式確認。
●イスラエル軍がエジプトに侵入し、第二次中東戦争(スエズ戦争)が勃発。
●日本が国際連合に加盟。
というような感じです。やはり遥か遠くの時代という印象がしますが、皆さんはどうでしょうか。
会議録回りで考えると、記録法は速記法しかありません。録音機はまだ出回っていません。テレビもまだありません。インターネットはおろか、パソコンのパの字もない時代です。印刷は、写植がようやく開発されたぐらいの時期でしょうか。コピー機なんてありませんし、今のように簡単に大量の写本をつくることは難しかったのではないかと思います。
ということは、本会議の記録は、速記法で記録され、それを手書きで普通の文字に起こしたものが原本として保存されていた時代です。発言取消の箇所は、原本に何らかの印をつけて処理され、配付用の会議録が作成されていたら、そこでは伏せ字になり、それ以外には、現場で傍聴していた人の記憶とメモ書きしか存在しないわけで、この「発言取消」処理は大きな意味を持ったわけです。
ところが、時代が進んで、録音機が出現しました。現在は小型のレコーダーで簡単に録音できます。テレビで中継されていることもあります。インターネットでは動画が全世界に配信されています。現場での傍聴は昔とさほど変わりませんが、それ以外の環境は劇的に変化してしまったわけです。
しかし、会議規則の「発言取消」は昔のままです。したがって、いろいろな問題が出てくるのは当然の結果だと思います。ということで、以下は次回。