議会活動と新型コロナウイルス対策

新型コロナウイルスで日本は崩壊してしまうんじゃないかと本気で心配してしまいますが、それはさておき、議会での対策について少し。「対策」といっても、条例を作るとか意見書を出すとか、そういう類の話じゃなくて、もっと単純な議会の運営のお話です。主に本会議場をどうするかということで少し考えてみたいと思います。

人が大勢集まることは避けようということですから、議会の本会議も開かなければいいわけですが、議会で議決されなければ実行できない事業などもあって、しかも議決してもらう時期にも一定の縛りがあるものもありますので、やはり本会議は適宜開かねばならなくなるわけですが、議員、執行部職員、議会事務局職員を合わせると結構多くの人数が一つの部屋に集まることになるので、いわゆる「三密」を避けることを考えねばなりません。

ということで、既にそれぞれの地方議会ではいろんな工夫がされていますが、それらも含めて、どんな方法があるのか、ちょっと考えてみたいと思います。

(1)場所
普段は本会議場でやるのですが、例えばビルの真ん中に本会議場があって窓が1つもないというようなところもあります。また、窓があっても、天候や周囲が騒音によっては窓を開けられないということもありますね。強力な換気扇や空気清浄機があればまだいいですが、そんなに特殊なものは装備していないのが普通でしょう。

本会議は、例えば屋外や、もっと風通しのよい静かなところで行うということも不可能ではありません。なので、今の議場の環境がよくないということであれば、そういったことも検討課題にはなってくると思います。しかし、ちょっとした飲み会を開くのとはわけが違って、本会議を開くには、いろいろな手続も要りますし、マイクなどの設備も必要になってくるので、そう簡単でもありません。

事務労力や経費などの問題も考えると、よほど環境の悪い議場でない限り、従来のところで行うことがまずは基本になると思います。

(2)人
人と人との距離が問題にされて、スーパーなどでは入場制限、また人を入れる場合には十分なソーシャルディスタンスの確保が求められていますから、仮に本会議場で行う場合も人と人との距離に気をつけねばなりません。政府の〇〇対策会議の模様がテレビで流れるたびに「隣の人との距離が近いんじゃ?」といつも思いますが、議会だけ特別、議員は絶対に感染しないなんていうことはあり得ませんからね。

議場は比較的広めの部屋のところが多いと思いますが、「言論の府」と言われるように、口角泡を飛ばして議論するところです。マスクをして発言すると若干音が不明瞭になりますが、非常事態ですからまあそれは仕方ないとしても、やはり飛沫が飛び交うような距離・環境ではいけません。

手っとり早いのは入場制限のような感じで、議場に入る人数を制限してやればいいわけで、実際にそうしている議会も既に結構あります。執行部や議会事務局職員は必要最低限の人数に絞ってやればいいでしょう。投票などがあってどうしても人手が要る場合は、そのときだけ臨時的に入場させればいいと思います。

議員については、事前に議会運営委員会で申し合わせて出席者を制限すればいいのですが、定足数の問題がありますし、他にも重要な案件で激しく議論を戦わせるときはそう簡単にいかないでしょう。また、ぎりぎりまで人数を減らしていると、トイレなどで中座されたら定足数を割ってしまうことにもなりかねません。さらに、採決時に出席者を絞るとなると、議員の採決権という最も重要な権利を剥奪することにもなるわけですから、その辺は十分な配慮が求められます。

(3)時間
「三密」の状態にならないようにすることも大切ですが、やむを得ずそれに近い環境にならざるを得ない場合には、なるべく時間を短くする工夫も必要でしょう。議事の運営で工夫を凝らして、なるべく短時間で切り上げるようにしたいものです。議案の採決は一括にしたり、質疑や質問の時間・人数制限なども考えられます。議事運営の次第書(議長の議事進行用のシナリオ)も昔のままの丁寧なところも多いですから、これを機会に簡略化をしてもいいでしょう。また、常時十分な換気ができないところでは、30分ごとに休憩を入れるなどの工夫も必要ですね。

(4)備品
主にはいわゆる机と椅子ですが、十分なソーシャルディスタンスを確保しようと思えば、例えば席は1つ飛ばしにするなどが必要になってきます。前後左右の人と余り距離がとれない場合は、徳島市議会さんのように、衝立を設置するなどの工夫が必要な場合もあるでしょう。もちろん、消毒液による清掃は欠かせませんが、マイクなども一々消毒するとなると、なかなか大変ですね。要所要所への消毒用アルコールの設置、マスク着用は当然ですね。

(5)傍聴者と速記者
まず、傍聴をどうするかですが、例えば緊急事態宣言が出ているようなときには一定の制限もやむを得ないような気もしますが、地方自治法では本会議は「公開」ですから、その辺をどう整理するかが問題となります。最近はネットで生中継をしているところも増えていますが、それだけで法の求める公開原則は担保されるのかどうか、この辺は少し議論のあるところでしょう。

ただし、幾ら傍聴の権利があるといっても、もともと傍聴席には物理的な限界があって、入りきれないほどの人が来た場合は入場制限を行うこともやむを得ないわけで、今回は安全な人と人との距離を考えてそのキャパがさらに減少してしまうことも理解してもらわなくてはなりません。既に「傍聴自粛のお願い」を呼びかけているところも多いですが、まあ、そういう対応が基本になるのかなとは思います。

また、速記者が臨席している地方議会は少なくなってきていますが、臨席している場合、普通は演壇の発言者に最も近い位置に座りますので、透明のアクリル板を置くなど、一定の配慮が必要でしょう。衆議院では速記席の位置を変えたということで、一時的にそれもやむを得ないでしょうが、恒常的にとなると、速記者の存在意義が薄れてしまうような気もします。議場の中の一番発言を聴きやすい位置に座っていることに価値があるのですからね。速記者自体の要・不要ということもありますが、それはまた別の機会に。

(6)会議規則など
例えば、生の発言は最低限にして、一般質問などは文書質問で対応するということも考えられます。国会では文書質問のほうが圧倒的に多いわけですが、地方議会では余り一般的ではないと思います。もちろん、既に今までもやってきているところもあって、そういうところはそれでいいとして、今回のことを機に取り入れようというところは、今後のことも考えて、やはり一定のきっちりしたルールづくりが必要でしょう。会議録への掲載方法など、波及する問題も出てきます。発言訂正や取消の扱いはどうなるのかなど、細かいこともいろいろと、一応は考えておかねばなりませんね。

なお、委員会についてはオンラインでの開催も可能と総務省から通知されたようなので、会議規則や委員会条例の改正を行えば可能となります。これは今後の委員会の在り方を大きく変えることにもなるような気がしますね。大阪市議会さんでは5月定例会で規則・条例の改正案が提案される予定とのことで、ちょっと注目ですね。

また、このところちょっと下火になっていたように思う通年議会という議論も、今回のように補正予算が何度も追加で上がってきて、その都度、臨時会を開いて対応しなければいけなかった議会では、そういった議論が活発化してくるかもしれませんね。

政府の「緊急事態宣言」をはじめとする各種の対応は「本当に危機感があるのか?」という疑念が拭えませんは、目の前で起こっている事態は紛れもなく大変なことで、世界大戦を凌ぐと言っても過言ではありません。そこに対処するためには、議会に関するさまざまなルールも早急に濃密(三密ではない)な議論をして、いい形に持っていければとは思います。ただし、大切な地方自治、地方議員ですから、その使命や権能を貶めてしまうようなことにはならないようにと、そこだけは特に注意していただきたいと思います。

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