議事録と速記録と会議録

表題にある3つの言葉は、皆さんもいろんなところで見聞きされているのではないかと思いますが、この3つはどう違うのかはお分かりでしょうか。一般的な日本語としての話は少し横において、ここでは議会でのお話です。

議会関係者でも、この3つは、結構、適当に使っている方も多いと思いますが、議会の会議録については地方自治法第123条で「会議録」として規定されていますので、正しい表現は「会議録」となります。ただし、これは本会議の記録に関して定められたもので、委員会や他の会議については関知しません。この法の規定を受けて、それぞれの議会では会議規則でさらに詳細に、記載事項や配布方法などを規定しています。

じゃ、「議事録」とは何でしょうか? 文字どおり読めば「議事の記録」という意味で、本会議で行われる議事を記録したものですから、決してこの言葉自体は間違いというわけではありません。ただし、前述したように、法にはそのような表現は出てきません。ところが、この「議事録」という言葉は、議員さんはもちろん、議会事務局職員や執行部の職員、あるいはマスコミ関係者などでもかなり使用されている感じがします。

「議事録」とは、日時、出席者、議題、議決結果等の要点のみを記載したものです。つまり、誰が何をどうしゃべったかといったことまでは記録されていません。それに対して「速記録」は、議場での発言を速記で一字一句記録した「発言の記録」になります。この2つは記録される内容が明確に違っていて、戦前の国会(帝国議会)では、この議事録と速記録の2本立てで記録が作られていました。やがて、この2つの要素は合体されていくわけですが、そのときには「議事速記録」といった表現を使われたこともあります。そういった名残なのか、いまだに「議事録」が結構幅をきかせているのですが、現在の正式な呼び名は「会議録」です。

少し話が変わりますが、例えば、本会議で問題発言があったとき、議長は「後刻、速記録を精査して善処します」というような発言をします。これは「会議録を精査して」でもいいのでしょうが、この場合の精査は緊急に行う必要がありますので、各種資料まで調った「会議録」の完成を待っている暇はありません。かといって、「議事録」だと発言内容の精査はできませんので、やはり、「速記録」で正解なのだと思います。

まあ、一般的にはどの言葉を使っても大体の意味は通じるわけですが、議会関係者なら一応その違いは頭に入れておいたほうがいいと思います。

蛇足ですが、会議録については、以前の自治法では「調製する」とされていました。今は「作成する」となっています。「作成」のほうが一般的で分かりやすいとは思いますが、私の感覚としては「調製」のほうがしっくりきます。

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