けんけんがくがく???
本会議の質問などでもよく使われる言葉ですが、表題のように「けんけんがくがく」と言う方が結構いらっしゃいます。「教育問題については、けんけんがくがくの議論を重ねてきました」というような感じですね。発言された御本人は、ちょっと難しい言葉を使ってさぞ御満悦なのかもしれませんが、これは間違いです。「けんけんがくがく」なんていう言葉はありません。……と、ずっと思ってきたのですが、この頃はこの誤用が多いからか、一部の辞書では認め始めているようですね。困ったものです。
「けんけんがくがく」は、漢字で書くと「喧々諤々」となるわけですが、これは「侃々諤々(かんかんがくがく)」と「喧々囂々(けんけんごうごう)」を混同してしまった誤用です。どちらも議論を交わしている場面に使用できますが、「侃々諤々」は正論と思う意見を正々堂々と闘わすというようなプラスの雰囲気、「喧々囂々」は各々が好き勝手なことを言って喧しいというようなマイナスの雰囲気のある言葉です。
それを混同して「喧々諤々(けんけんがくがく)」とすると、プラスとマイナスが混じり合ってちょうどよくなるかというと、そういうわけでもありませんね。自分の正しいと思う意見を遠慮なく、好き勝手に各々が騒ぎ立てるというような意味になるのでしょうか。
いずれにしても、冒頭で述べた「教育の問題については……議論を重ねてきました」で使うなら、やはり「侃々諤々」でしょう。「喧々囂々たる非難が起きた」とか、こちらのほうは誤用されるケースは少ないように思いますが、「しっかり議論した」というような意味で「喧々諤々(けんけんがくがく)」と言う人は結構います。一般人の雑談ならまあいいですが、公の場で発言するときには注意が必要ですね。
会議録では、この程度の誤用は正しい形で処理したいところです。会議録作成担当者の整文処理としてやってもいいレベルだと思います。ただし、発言が乱れていて文脈からはどういう意味なのかが明確でないといった場合などは、発言者に確認するなり、一定の手続をとった上で処理するほうがいいでしょう。まあ、他にも誤用の多い人なら、あえてそのままにしておくというのもありだとは思いますが……。実際、国会会議録で検索すると「けんけんがくがく」で400以上もヒットします。もうこんな誤用を認めてしまったということなのでしょうか???