最終的な意思決定機関

地方議会とは、それぞれの地方公共団体に置かれ、首長から提案された議案(予算や条例、財産取得、訴訟の提起、契約など)、あるいは議員みずからが作成・提案した議案(条例など)について、構成する議員全員による会議での多数決でその可否を決し、その地方公共団体としての最終的な意思決定を行う、重要な機関です。身近な例で言うと、公共施設の利用料金の決定なども、最終的な決定はこの議会が行っているわけですね。

憲法では、地方公共団体の議事機関として議会を設置することが規定されています。そして、地方自治法(以下「法」)では普通地方公共団体に議会を置くことが規定され、以下、関係法や会議規則などで議会の運営等に関するさまざまな約束事が規定されています。

ここで、議会というものに関係する者としてまずしっかり認識しておきたいことは、「議会は憲法に存在根拠を持つ重要な機関である」ということです。スキャンダラスな事件が発生すると、すぐ「議会不要論」が起こったりもしますが、実際に議会をなくそうというなら、まず憲法の改正から始めなければなりません。憲法改正はなかなかハードルが高いことは、皆さん御承知のとおりです。ですから、議会はそう簡単にはなくなりません。したがって、今後も議会は存続し続け、引き続き、重要な役割を担っていかざるを得ないわけです。憲法に直接その名前が出てくるものはそう多くありません。その中に「議会」というものがあることの意味を、まずよく理解しておきましょう。

さて、その重要な役割は、もう既にお分かりかと思いますが、「議会は都道府県や区市町村としての最終的な意思決定を行う」ということです。例えば、大阪都構想というものがありますが、首長に最終決定権があるなら、もうとっくに大阪都になっていてもよさそうなものですが、議会の同意を得ないと前に進めないことから、今のような状況になっているわけですね。首長と議会は「車の両輪」とよく言われますが、2つの車輪が同じ方向を向いて回らないと前には進めませんね。そういう制度の作りになっているわけです。

なお、町村の場合は、条例で定めることによって、議会を置かずに、選挙権を有する者による「総会」を設けることができます。人口の少ない町村なら、住民代表をあえて選挙で選ばずとも、住民みんなで決めていけばいいじゃないかということですね。

数年前、人口400人程度の高知県大川村では、村議会議員のなり手不足が深刻化したので、この総会の設置を検討したことがありました。随分ニュースになったので記憶に残っていらっしゃる方も多いと思いますが、結局、総会は設置されず、やはり村議会でということに落ち着きました。真剣に総会の設置に向けて検討されたようですが、なかなか難しい問題もあって実現しなかったということで、ことほどさように、議会をなくしてしまうということはそう簡単ではないということです。

議会は、上で少し述べたように、「最終的な意思決定を行う」ところです。ところが、これについては余り知られていないような気がしてなりません。マスコミ受けするユニークな首長が誕生した自治体などでは、議会が「抵抗勢力」としてすっかり悪者扱いされてしまう例もありますが、翻って考えてみると、それは「議会が最終決定権を持っている」ことの証拠でしょう。議会に大した力がなければ首長は好き勝手にできるわけですが、議会が認めなければ首長は何もできませんし、首長の提案に対して修正したり否決したり、さらには首長に対する不信任案の提出まで、強力な権限を持っているのが議会という機関です。

ということで、住民の皆さんには、もっと議会というものに興味を持っていただきたいと思います。

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