札幌市議会の除名処分取消

令和元年5月の札幌市議会臨時会で「約9時間にわたって議会を空転させた」として除名処分を受けていた松浦忠元議員。市を相手に処分取消を求めた訴訟を起こしていましたが、その判決が6月22日に札幌地裁であり、議会の行った除名処分は「裁量権の範囲を超え、または乱用したものであって違法」として、除名処分は取消とされました。札幌市議会は控訴するらしいので、今後の展開が気になりますが、なかなか珍しい例だと思うので、少し話題にしてみたいと思います。

まず、令和元年5月臨時会で何があったのかということですが、統一地方選挙後初の臨時会ではまだ議長がいませんので、出席議員中の最年長議員が臨時議長を務めて、まず議長の選挙を行うことになっています。そこで年長の松浦議員が臨時議長となって議長席についたわけですが、そこで突然、議長選挙の方法を事前の申合せとは違う方法でやりたいと言い出して、議場は紛糾し、議事は長時間空転したということです。詳細は、ここの会議録(第1号)を御覧ください。当事者でなければ、なかなか面白いと思いますよ。

会議録を読んでいただくと分かりますが、議場は大混乱で、不規則発言もたくさん出ています。こんな記録を作成するのは大変だと思いますが、かといって、作成しないわけにもいきません。こういう場合は、懲罰などの問題に発展する可能性は非常に高いですから、いわゆる「整文」は、原則、行いません。「まあ」とか「えー」とか、そういうものは一定整理することもありますが、基本は「言ったとおり」です。

札幌市議会は、この混乱を引き起こした松浦議員に対して、「懲罰」の中でも最も重い「除名」という処分を行いました。これは選挙で選ばれた議員を失職させてしまうというもので、それを不服とした松浦議員は訴訟を起こし、今回の判決に至ったということです。判決は、一言で言うと、要するに「議会はやり過ぎ」ということで、処分の取消となったわけですね。

松浦議員が失職したことによって次点の議員が既に繰上当選していますので、この判決の意味は決して小さくありません。「議事進行に重大な影響を及ぼしたことは確かだが、議員の身分を失うほどのものではなかった」という判断になったようですが、私も、実際に現場にいたわけでもなく、裏の細かな事情も分からず、ただ会議録を読んだだけなのでピント外れなところがあったらお許し願いたいですが、確かに、除名というのは少し重過ぎるような気がしないでもありません。

ただ、この事例のようなことが起こったとき、どんな対抗手段がとれるのだろうか?とは思いました。議場にいる年長者が臨時議長を務めることは法で定められているので、それは守らねばなりません。ところが、その臨時議長が暴走してしまったわけですね。それに対して正規の手続、つまり例えばいろんな動議などで正常な運営を求めたところで一切応じてくれないわけですから、まさにお手上げですね。やむを得ず、今回のように議員が議場から引き揚げて定足数を欠く状態にしてしまうしかないでしょう。

ただ、今回は休憩中も議長席を占拠され続けたということですから、本会議場で会議を再開することもできません。仕方なく、議会運営委員会を開いて本会議を別の会議室で開くことを申し合わせ、急遽本会議を再開していきなり議長選挙を行うというようなことも考えられますね。あるいは、実際に札幌市議会が行ったように、議員の総意で臨時議長の職を解くなんていう荒技も許されるのでしょうか。私には、いずれの方法も決して問題なしとは言えませんが、かといって他に有効な策もないし。

いずれにしても、住民の生活に重大な影響を及ぼす施策について議論百出で紛糾したというのならともかく、議長の選出方法などというレベルの低いことで揉めるのはやめてもらいたいですね。私が札幌市民だったら、その日に残業した職員の超過勤務手当や電気代などの損害賠償をしてほしいぐらいですが。まあ、控訴審で争われることになるので、その結果を注視するしかないというところでしょうか。

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