流れに棹さす


今回のテーマは「流れに棹さす」という言葉です。まずは、例によって国会の会議録からの引用です。

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
実質アジアにおけるルール作りを日米で主導するという、そういう趣旨もあるTPPについては、日本が自由貿易体制を進める、保護主義の流れにさおを差すというノーブレスオブリージュの気持ちを持って、
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

決して国会の会議録を目の敵にしているわけではないので誤解なされませんようにお願いしたいのですが、この使い方は正しいのでしょうか?ということです。

この言葉は、夏目漱石の「草枕」の冒頭にある「山路を登りながら、かう考へた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。」でおなじみの言葉ですが、上の会議録では少し違った意味で使われているように思います。

浅学な私ゆえ、意味を取り違えていたらお許し願いたいのですが、「自由貿易を進めて、保護主義にはブレーキをかけたい」ということを言いたかったのではないのでしょうか。だとすれば、本来の使い方で言えば、この言い方だと「保護主義を加速させる」というようなことになってしまいませんか?ということです。

手元の「新明解」では、「さおさす」は「棹をさして船を進める」との解説があって、「最近は誤って、逆行の意に使用する向きも有る」と注釈が記されています。川を下る船の船頭さんが、棹を川底にさして船を進めることを表した言葉なのですが、「水をさす」などとの混同でしょうか、「逆行する」とか「逆らう」という意味で間違って使われることも多いですね。

「ノーブレスオブリージュ」というような言葉を使うなら、その直前の言葉にも注意を払ってほしかったですね。まあ、前後の流れから、「さおを差す」で言いたかったことは読み取れますので、会議録ではこのままでいいでしょう。また、「さおさす」ではなくて「さおを差す」で別の言葉だと言うなら、それもありでしょう。ただし、前後の文脈から正しく発言の意図が読み取れないというときは一定の手当ても考えないといけないかなとは思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

議員

次の記事

議員のお給料