てんもうかいかい
前に老子が好きだと書きましたが、これも老子の言葉で、大好きなものです。最初に音だけ聞いたときは「どこが痒いんじゃ?」と、とんちんかんなことを思いましたが……。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の形が有名ですね。最後の部分は「漏らさず」ではなくて「失わず」というパターンもあります。老子は「失わず」だったと思いますが、どちらかというと中国の「魏書」に出てくる「漏らさず」のほうが有名でしょうか。
「天網」は字のとおり「天の網」ですね。「恢」は広い、大きいという意味で、それが2つ並んでいる「恢恢」はめちゃくちゃ大きいとイメージできます。つまり天がかける網はめっちゃ大きいんですが、残念ながら「疎」、つまり粗いんですね。だから、ぱっと見ると抜け穴だらけのように見えますが、いやいや、そこはお天道様、全く抜かりはないということです。
世の中でいろいろ悪いことをしていそうなのになかなか捕まらないとか、人の道を明らかに踏み外しているのに何の罰も当たらないとか、そんな人を見るたびに、私はいつもこの言葉を唱えます。「てんもうかいかいそにしてうしなわず、てんもうかいかいそにしてもらさず」と。何か、お経のような感じですね。
「お天道様は全てお見通しだよ」と子供の頃言われた記憶がありますが、それなら、悪いことだけじゃなくて良いことも見てくれているはずだから、いい意味でも使えるのかと思って少し調べましたが、どうも悪いことを戒める意味のようですね。なので、「市長は毎朝、誰も見ていないところでごみを拾ってまちをきれいにしてくれています。まさに天網恢恢疎にして漏らさずで、きっと次の選挙でも圧勝するでしょう」と言うと、やっぱりちょっと具合が悪いのでしょうか。
ちなみに、四字熟語で言い換えると「天罰覿面」、反対の意味の言葉は「網呑舟の魚を漏らす」だそうです。メモっとこうと。