都道府県議会制度研究会報告書(3)


少し間があきましたが、3つ目は、「再議制度の見直し」です。これは、まず「再議」からちょっと説明しないといけませんが、細かくやると大変なので、かなり大雑把にさせていただきますね。

「再議」とは、議会の議決に対して首長が「ちょっと待ってくれ」とストップをかけられる制度です。普通は議会の本会議で議決された瞬間にその案件の結果は確定しますが、それについて「もう一回考え直してくれ」と言うことができるんですね。

この再議制度には幾つかのパターンがあって、それぞれ微妙に条件などが違うのでややこしいのですが、取りあえず、大きく分けると「一般再議」と「特別再議」の2つに分けることができます。

そして、その「一般再議」ですが、これも実は大きく2つに分かれます。1つは条例の制定・改廃と予算に関する議案の場合で、もう1つはそれ以外の議案の場合です。今回の報告書では、前者の条例の制定・改廃と予算に関する議案についての提言が行われています。

条例議案や予算議案は、普通は本会議で過半数の賛成があれば可決・成立します。それに対して首長が「待った」をかけられるのがこの「一般再議」というものです。地方自治法第176条の規定になります。議長から議決書の送付を受けた日から10 日以内に「再議してくれ」と首長が言えば、もう一度その案件の審議が行われることになります。

この場合、再議してもう一度採決し直すときには、出席議員の2/3以上の賛成が必要となります。つまり、最初の採決のときは過半数でよかったものが、再議では2/3以上の賛成へと、そのハードルが上がるわけです。

これに対して、報告書は「議会が団体意思決定機関であることを考慮し、過半数議決に見直す必要がある」としています。議会は最終的な意思決定機関としての権限を与えられており、それに基づいて慎重な審議を行った結果、過半数で可決という意思を示しているのに、それを首長1人の意向でもう一度審議させられ、さらに再び可決するにはハードルが上がってしまうのはいかがなものかということでしょう。

この辺、確かに報告書の主張も理解できます。「議会の権威はどうなるんだ」というようなことにもなるのだと思います。しかし、私は、地方議会で決められることは、できるだけ広く多くの住民の意思を酌んできた議員たちが侃々諤々の議論をし、より多くの人が納得できる案として練り上げてから採決されるべきものだと考えています。したがって、本当は賛成全員に近い形で事が決められるべきで、賛否が拮抗するような状況というのは、その案がまだ煮詰まっていない証拠ではないでしょうか。

そのような「まだ煮詰まっていない案を言わば数で強引に決めてしまった」ような案件に対して首長から「泣きのもう一回」が入った場合であれば、私は現状の2/3以上という条件のままでいいのじゃないかと考えます。首長が自ら提案した条例案や予算案なら、仮にそれを過半数ぎりぎりで可決されても、自分の主張を認めてもらったわけですから別に文句は言わないでしょう。

ということは、この一般再議の具体的な対象となるのは、議員提案の条例案か、首長が提案した条例案や予算案に対する修正案になります。つまり、首長にとっては賛成できないような方向で議会が新設したり修正したものになりますが、首長と方向が合わないものについては、議会としても圧倒的多数で決めることを目指すほうがいいのでないでしょうか。議員間でも賛否が分かれ、賛成者の数も拮抗しているようなものを無理に過半数で決定してしまうことは議会制民主主義の精神からしてどうなのかと、素朴な疑問を持ちます。

過半数議決という大原則も分かりますし、再議制度を変な政争の具にされてしまう懸念もありますが、やはり私は従来どおりの過半数でいいのではと思います。

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