”キメツノミクス”に配給会社の悲喜交々


という週刊誌の見出しにちょっと引っかかったので、復習を。

「鬼滅の刃」が驚異的なヒットとなる中、「鬼滅」の配給会社は大喜びだが、他の作品の配給会社では逆に窮地に追い込まれるところもある……というような内容だと思いますが、「悲喜交々」はそういう使い方でいいのか?という素朴な疑問です。

「悲喜交々」は「ひきこもごも」と読み、「悲しみと喜びを代わる代わる味わうこと」が本来の意味です。つまり、Aという配給会社が、「鬼滅の刃」が大ヒットして喜び、次の作品が大コケして悲しみ、そのまた次の作品がヒットして喜び……というふうに、Aという会社の中で悲しみと喜びを代わる代わる味わうことになるという形が本来なわけですね。なので、A社は「鬼滅の刃」で大喜びしているが、B社はその煽りを食ってどん底というようなときには使えないわけです。

ただ、この誤用もかなり広まりつつあるようで、受験期になると「悲喜交々の合格発表」などという表現もよく目にします。1人で複数の大学を受験して、合格したところもあれば不合格だったところもあるというのならこの表現でいいのですが、A大学の入試で合格する人もあれば不合格になる人もあるというときは、「交々」ではないわけですね。

ところで、こういう誤用が会議録で出てきたときはどうしましょうか。本来の意味ではないので直したい気もしますが、発言者本人から「訂正してくれ」という申し出がなければ、そのまま「発言どおり」でいいのではないかと思います。「交々」を「様々」に置き換えるという処理ぐらいなら整文範囲でいけるとは思いますが、このレベルを直し始めると他にもたくさんあるので……。

もちろん、会議録以外の、講演記録などではちゃんと直しますけどね。

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