きょうこうばんたん


テレビで「極主夫道」という番組を見ていたら、結婚式での新郎(元極道)の挨拶の中で、「きょうこうばんたんよろしくお願いいたします」という表現が出てきました。

字幕では「向後万端」と出まして、「万端」は違和感がなかったのですが、「向後」のほうがどうもすっきりしない感じが残ったので、ちょっと調べてみました。

「向後」は、意味としては「今後」と同じですね。「こうご」という読み方なら比較的なじみがあるんですが、「きょうこう」は全然音が違うじゃないの?と思ったわけです。「おいおい、字幕、やっちゃったんじゃないの?」という感じで、嫌らしい期待感を抱きつつ手元の漢和辞典で調べてみたのですが、何と、「向」には確かに「きょう」という読み方も載っていました。字幕が間違っていたわけではありませんでした。失礼しました。

この「向後万端……」というフレーズ、「男はつらいよ」のフーテンの寅さんの挨拶では結構有名なものらしいです。寅さんの映画は好きでよく見ていたのに、全然気づいていませんでしたね。「今後」より古語的な感じがするし、寅さんや極主夫さんも元その筋の方ということなので、あまり一般的ではないのでしょうか? いわゆるお芝居(任侠物の時代劇?)の口上に出てきそうですけどね。

ちなみに、「嚮後」という書き方もあるようです。私の愛用している「新明解国語辞典(第5版)では「きょうこう」で引いても「向後」は出ていません。「広辞苑」は、さすがです。ちゃんと出ていました。

ということで、会議録で「きょうこうばんたん」という言葉が出てきて、手元の辞書を引いても載っていないからと、安易に「強行万端」とか「強攻万端」とかにしないように気をつけましょう。

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