インパール作戦
最近、ネットニュースではこの「インパール作戦」という言葉を時々目にするようになりました。全国紙というより、週刊誌などが主な印象がありますが、なるほど、むべなるかなという点もあるので、ちょっとだけぼやいておきたいと思います。
御存じのとおり、インパール作戦は、第二次世界大戦のビルマ戦線で行われた「史上最悪の作戦」と呼ばれるもので、「とにかく進め!」と兵站などを無視したむちゃな作戦で、日本軍が歴史的な大敗を喫したとされるものです。ビルマは現在「ミャンマー」となり、当時日本軍と戦ったのがアウンサン氏で、その長女がスーチーさん。ミャンマーでは今、軍事クーデターが起こって混乱していますが、何とも妙な時節の符合?
さて、冒頭のニュースでは、東京オリンピックの開催に突き進む上層部のことを、まるでインパール作戦のようだと報じています。「とにかく始めたことだから」とか「○○さんの悲願だから」とか、そういったことが最優先され、冷静な状況判断もなく、緻密な作戦もなく、「とにかく進め!」的な感じがするのは、確かによく似ていると思います。
インパールに限らず、どの戦争でもいつも思うことは、司令部と現場の感覚のずれということです。司令部の人は、現場で実際に戦闘を行う人たちのことを単なる「駒」としか見ていないのではないかと、いつも思います。「ここから攻めれば○○人ぐらい死ぬな」とか、そういうことが普通に語られるわけですね。指揮官は遠く離れた安全な場所で、ミサイルシステムのスイッチを押したり、コンピューターのシミュレーションで「ここにこれだけつぎ込め」とやっているだけで、現場で腕や足が爆弾で吹き飛ばされたり、飢えて動物の餌食になったりする、そういった悲惨な風景は全く頭に浮かんでこないのかもしれません。
真面目にやっている人たちを視察して「やっている感」を出すぐらいはまだかわいいもので、「○月までに○○をやれ」といったむちゃな命令が次々と来て振り回される現場の身にも少しはなってもらいたいものですが、そういう情報は入らないのか、あえて入れないのか……。
それにしても、インパール作戦は、昭和19年3月から7月まで継続されて、約16万人の日本兵が命を落としました。これまた妙に時期が重なるのは歴史の警告なのではないかと思いますが、どうでしょうか。週刊誌などでは「五輪中止」といった論調も増えてきていますが、大手新聞ではあまり見ませんね……と思ったら、なるほど、いわゆる5大紙はみんな東京オリンピックのスポンサーなんですね。