議員の個人情報
今回の統一地方選挙で女性議員が大幅に増えたことは、さきに述べたとおりです。それ自体は歓迎すべきことですが、それと同時に少し考えなきゃいけない問題もあると思います。
それは、議員の個人情報の扱いについてです。ジェンダーレスの時代となってきているので、これは男女関係なくということになるのですが、そうはいっても、セクハラやストーカーの被害などは女性のほうが遭いやすいのではないかと思います。そこで考えてほしいのが、そういった議員の個人情報をどこまで公開するかという点です。従来、男社会だった地方議会ではあまり問題にならなかったのだと思いますが、時代は変わってしまったんじゃないでしょうか。
「議員は公人だ」として、住所や生年月日といった個人情報は、惜しげもなくオープンにされてきました。今もそうしているところは多いと思います。
そもそも、公職選挙法第86条の4の3項には、「公職の候補者となるべき者の氏名、本籍、住所、生年月日、職業及び所属する政党その他の政治団体の名称(中略)その他政令で定める事項を記載しなければならない。」とされていて、そして、それはそのまま立候補者の情報として公開されたりもします。それも今の時代どうかなと思いますが、議会は議会で、「議員は、宿所又は連絡所を定めたときは、議長に届け出なければならない。」という会議規則の定めがありますので、同様に、議会事務局に住所等の情報を提供することになります。
問題は、それをどこまで公開するかということです。議会事務局に届け出ることは「出席催告」の問題などもあるので必要なことですが、それを広く公開するかどうか、そこについてはもう一度じっくり考えてみるべきではないでしょうか。
議員の後援会の関係者など、議員に近しい人は恐らく連絡先等の情報は持っていらっしゃるでしょう。議会事務局も前述の届出で必要な情報は得られます。とすると、ネット等で広く公開するのは誰のためかということになるわけですが、それはやはり不特定多数の人への情報提供ということになるのではないかと思います。じゃあ、それがなぜ必要なのか。住民が議員とコンタクトを取りたいと思うなら、例えばメールアドレスを記載しておいてそこに連絡してもらう、あるいは、ネットなどが使えない人は議会事務局に連絡して取り次ぎを依頼するといった形でいいのではないでしょうか。
標準会議規則が制定された昭和22年、議員名簿に住所等の詳細な情報が記入されていても、それを見る人はごく限られた人でした。スマホもネットもありませんでした。議員になる人も、地元の名士とか、地元では有名な方が多かったのではないでしょうか。しかし、今は違います。いろんな経歴を持った方が議員になる時代になっています。
事務所を持っている議員ならそこを連絡所として公開してもいいと思いますが、そうでない議員は、自宅の住所と電話番号という重要な情報を全世界に向けて無差別に提供するような形になります。生年月日まで公開しているところもありますが、名前、住所、電話、生年月日、そして顔写真、これだけのデータがあれば、その筋の人ならいろんな悪巧みができてしまうのではないでしょうか。事務所を持たないフリーランスも同じで、最近は「ビジネス用の名刺には住所や電話などは書かず、メールアドレスやウェブサイトの情報だけにしよう」というようなことも言われる時代です。
ということで、「全部公開していいよ」とおっしゃる議員については、そうすればいいでしょうが、それを躊躇されるような議員については、やはり配慮が必要だと思います。仮に住所を書くにしても、別に番地までは要らないと思いますし、生年月日じゃなく年齢だけで十分だと思いますが、どうでしょう。
個人的には、やはり顔写真は欲しいと思います。あと、名前はもちろん必要で、読み方はぜひ教えていただきたいですね。住所は選挙区名か市町村名まで、あと、連絡先のメールアドレス、ウェブサイトのアドレス、所属の会派・委員会、議席番号、当選回数、それぐらいでいいんじゃないかと思います。年齢はどっちでもいいですが、もし書くなら生年あるいは実年齢で、生年月日までは必要ないと思います。