会議録の品質

今日は、久しぶりに会議録についてです。「品質」といっても、会議録自体は商品じゃありませんから、ここでは「委託業者から納品される原稿」という意味での「品質」のお話です。

地方議会で「会議録」というと、それは本会議の記録を指します。委員会の記録なども同じような呼び方をされますが、厳密には違うわけですね。本会議の記録つまり会議録は、とても重要な記録です。その地方公共団体の中で行われる様々な会議の中でも最重要のものと言っていいと思います。

会議録を作成するには、まず発言(音)を文字化しなければなりません。その方法は大きく分けて2つ。議会事務局の職員が自分で文字化するか、専門の業者に委託するか。多くの議会では委託という方法を取っておられるのではないかと思います。職員が自ら文字化する場合と音声認識を使うという話は、今回はさておきます。今回のメインは業者に委託をして納品される原稿についてです。

業者さんはいわゆるプロなので、高品質の原稿、つまりミスのないものが納められるのが当たり前ですが、残念ながら、そうではない事例もよく聞きます。本会議なら、音も標準以上の音質で録音されますし、内容も、議長の議事整理の下、淡々と進むのが普通ですから、そう難しい仕事ではありません。

ということであれば、プロが作成する原稿は、ほとんど100%に近い正確度があって当然です。もちろん、ものすごく膨大な文字量になるので、そりゃ多少はイージーミスが残る場合もありますし、録音だけではどうしても判別できないものなどもありますが、それでも、チェックする議会事務局には大した負担にならないような質のものが納品されるはずです。

ところが、議会事務局の職員が必死に録音と照合して、真っ赤に訂正が入るような原稿もまかり通っているわけですね。そんなもの、他の業務なら返品や契約打ち切りだろうと思うのですが、なぜか結構そのまま通用してしまっています。

本来やらなくてもいい綿密な校閲という作業を事務局に強いる低レベルな業務委託。昨今、政府が提供するアプリ等のポンコツぶりが話題になって、そこにとてつもない額の税金が使われていることを知って愕然としてしまいますが、金額は小さいにせよ、同じような構図が地方議会の会議録作成業務委託でも起こっているわけですね。

もちろん、高品質な原稿を納める業者さんもいます。また、発注側にも、入札での低価格競争や短納期といった、受注者側のことを一顧だにしないというような問題もあります。先日、裁判所が民間委託している録音反訳の質がひどいという記事をどこかで見ましたが、同じような状況は地方議会でも起きているということです。

インターネットで公開されている会議録を見ると、びっくりするようなミスはあまり見かけませんが、それは時間をかけて正確度を上げる作業を行っている事務局の方々のご苦労があってのことということです。その作業が大変だ、つまりそれほど低レベルな原稿しか納められないということであれば、AIの音声認識にお願いするほうがいいのではないかと思います。ハイレベル(というか、普通のプロ)の納める原稿は、ざ~っと流し読みするだけでOKというぐらいのものですよ。