議員同士の議論を見たい

2023年6月26日の西日本新聞に「議長と議会改革 先導役担う自覚はあるか」というタイトルの社説が掲載されました。

「地元の知事や市町村長の名前、顔なら分かるけれど、議長はよく知らない。多くの人に共通する現実ではないか。」からスタートするこの社説は、議会と住民の距離を縮めることが大切だと説いています。そして、議長はその先頭に立つべきだと。以下、ごもっともと思う点が述べられていきますが、私が特に大きくうなずきたいのは「議案の採決までの過程を見直したい」というところです。

具体的には、「議員同士で討議する場面をつくれないか」という提案です。これが今の地方議会では、住民からするとほとんど見えないわけで、辛うじて議員個人のSNSなどを通じてうかがい知るだけではないでしょうか。もちろん、議員による討論を制度化して実施している議会も一部にあることは承知していますが、まだまだ少数だと思います。

首長から議案が提出されて、その議案について誰もが「???」と思うような疑問点を質疑でただす、これは当然のことですね。それは本会議や委員会で実現していると思います。中継や会議録からも、その点は知ることができます。

また、首長に対する一般質問はほとんどの議会で行われていると思います。これも大事なことで、住民代表として首長の考えを聞くことになります。当然、公開されていますね。

ただ、たくさんいる議員がそれぞれどんな考え方を持っているのか、その辺は余りよく見えてこない気がします。規模の大きな議会なら会派制をとっているので、ある程度の考え方は想像できますが、本来は議員一人一人が違う考え方を持っているのが当然で、そこを住民(有権者)は聞きたいと思っているのではないでしょうか。

例えば、何かの施設の使用料の値上げの議案が上がってきた。首長にその理由などを聞くことはもちろんですが、じゃあ、議員はそれについてどう思っているのか。仕方がないと思っているのか、もっと上げるべきだと思っているのか、値上げはだめだと思っているのか、その辺がいまいちよく分からないし、例えば、首長からは1000円の値上げ案で出てきたが、議員同士で話し合って700円という妥協点を見つけるようなことはできないのかとか。

もちろん、そういったことは、議案になって出てくる前に、会派ごとに、あるいは特定の議員と首長部局の間で水面下の話合いがされて、決着がついてから出てきているのだと思いますが、そこの生々しいやり取りの話が聞きたいと思うわけですね。それを聞けば、「ああ、この議員は私の考え方に近い」とか、逆に「この議員はだめだ」とか、そういう判断ができるようになるわけです。

議会の広報紙に議案ごとの議員の賛否が掲載されているところも多く、それで判断せよということになるのかもしれませんが、そこに至るまで、議員間でどんな議論が積み重ねられたのかが知りたい。自分にとって納得できない結論であっても、そこに至る過程でどんな意見が出たのかを知りたいし、ひょっとしたらその議論の中で「なるほど」と自分の考えが変わることもあり得ると思うんです。

でも、残念ながら、あまりそういう現場は公開されていません。本会議にしろ委員会にしろ、議員が首長部局を問いただすような形ばかりで、議員同士がばちばち火花を散らしての議論が見られない。そこにフラストレーションがたまってしまう気がします。もちろん、本会議の討論という場もありますが、あれは一方的に意見を述べるだけなので、やはり、やり取りをしっかり見てみたいところです。

いろいろ事情があるのは分かりますが、全部打合せができて、形だけの審議で、国会のように会派の縛りみたいなものもあって、少数意見には耳を貸さずに参集的には数の力で押し切るだけ、というのでは、いつまでたっても「地方議会不要論」はなくならないのじゃないかと思います。