議会の速記者について①

今回は私の本職でもあった速記について、書いておきたいと思います。

速記法が発表されて今年で140年で、1890年(明治23)の帝国議会開設と同時に貴衆両院で採用されます。ということは、第1回の帝国議会から今日まで完全な会議録が残されているわけで、それは先進国の中では唯一と言われています。

終戦後、現在の地方自治体の形となりますが、都道府県を中心に、全国各地の議会で速記者は記録を担当していきます。市議会でも採用されていますが、そのカバー率がどれほどだったかは知りません。町村議会まではなかなか人員が行き渡らなかったのではないかと思います。

発言した瞬間に消えてしまう人の声(音声)を何らかの形にとどめる、つまり記録することができたのは、当時は速記法だけです。衆参両院でそれぞれ速記者養成所ができ、民間の速記学校も多くできて、毎年かなりの数の速記者を輩出していきます。

標準市議会会議規則第85条②には「議事は、速記法によって速記する。」とあります。標準都道府県議会会議規則第124条2には、「議事は、速記法その他議長が適当と認める方法によつて記録する。」とあります。都道府県のものは、最近の状況に鑑み、「その他議長が適当と認める方法」というのが最近追加されましたが、もとは「速記法」だけだったのです。

標準町村議会会議規則には、この規定はありません。この辺は、その速記者を実際に確保できなかったということを表しているのじゃないかと私は思います。

ちなみに、速記法では、現在の検定試験でいうと、分速320字の速度で朗読されたものを速記して、普通の漢字仮名交じり文に直し、正確度が98%以上あると1級が与えられます。テレビなどのアナウンサーの読む速度が分速280~300字なので、一応全て書き取っていける速度です。

ただし、実務の場合は専門語や固有名詞なども多くなって書きにくくなるので、最低350字ぐらいは書けないと厳しいでしょう。瞬間的に速度が上がることもあるので、400字ぐらいは書けるようになっておくことがプロには求められます。

その後、1960年代にオープンリール型の録音機が出現しますが、それまでは唯一の記録法が速記だったわけです。以後の展開については、また次回で。