香川県議会で発言削除を求める動議を可決

最近、変な事例が多いですね。

2023年10月4日、香川県議会の代表質問で立憲・市民派ネットの議員(1期目)が「今からでも北米観光旅行を取りやめて」と発言し、自民党香川県政会の議員から「県民の誤解を招く」として発言の削除を求める動議が提出され、賛成多数で可決されたとのことです。

発言した議員は「削除に応じるつもりはない」とのことで、「議長が命じて議事録から削除されることになります」とKSB瀬戸内海放送の記事には書かれています。「されることになります」ということですから、まだ確定はしていないのでしょうか。その辺はちょっと分かりませんが……。

さんざん叩かれた香川県議会の海外視察。2021年に高松地裁から「実質的には観光」と断じられ、約760万円の返還が命じられ、2022年に判決が確定。そのことはすっかり忘れたのか、今年また2100万円を超える海外視察計画が可決され、その後の批判を受けて3割ほど減額する計画を発表。

まあ、計画するほうはそれなりの意義や意味を見いだしているのでしょうが、過去の経緯を知っている一般人としたら、「またか」という気がするのもやむを得ないことで、「観光旅行」と表現した議員さんの気持ちもよく分かります。当然、言われたほうが「何ということを言うか」と怒るのも、またよく分かります。

まあ、議会は言論の場なので、丁々発止の議論をしていただければいいわけです。主義主張の違いで、激しくぶつかることも当然あります。そういうぶつかり合いを公開して、住民にどちらの言い分が正しいかを判断してもらえばいいわけです。

発言の取消については、発言者自らが取り消したいという形で行うのが普通です。本人は取り消すつもりはないと言っているものを、他人が動議という手段を使って数の論理で無理やり取り消させるというのは、「言論の府」としていかがでしょう?

まあ、動議が可決されても何の法的な効果もありませんので、議長が何もしなければそれで終わりですが、議長も多数派の言うことを聞かないと自分の立場が悪くなりますから、やむをえず取消命令を発することになるのでしょう。これは地方自治法第129条に基づくもので、「議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるとき」は発言を取り消させることができるわけです。

ただ、今回の場合、明らかな差別発言とか、他国を侮辱したような発言とかいうことではありません。言わば施策・事業に対する見解の相違で生じた発言ですから、法ではどこに当たるのでしょうか。「議場の秩序を乱す」ということになるのでしょうか?

国会でも、与党と野党では政策に対する考え方が真逆なものはたくさんあります。例えば消費税を上げろ・下げろという主張がぶつかることはよくありますね。上げろという立場の者が「下げろ」という意見はけしからんとして、その議論を数で封殺するようなことをしたら、それは会議体の死を意味することになります。

というようなことを考えると、今回の香川県議会の発言取消に関する一連の動きは、「また株を下げたな」としか思えません。「観光旅行」と言われて腹が立つなら、その反論を堂々と議場でやればいいんです。このブログでは何回も訴えてきていることですが、数の論理で押し切ってしまう議会には存在価値がありません。