さらなる悪手の香川県議会

先日、香川県議会で、海外視察を「観光旅行」と発言した議員に対して発言取消の動議が可決された件を御紹介しましたが、朝日新聞デジタルの記事によると「議長が取消を命じていた」と報じられていましたから、やはりそのような結果となったのでしょう。結果的に、一般に公開される会議録からその言葉は削除されてしまいます。(原本には残ります)

さて、今回の件の議会としての最初の悪手は、発言取消の動議を可決したこと、2つ目は、それを受けて議長が取消を命じたこと、そして、3つ目が、当該発言を行った議員に対して「問責決議」が可決されたことでしょう。

同じく朝日新聞デジタルでは「差別、人権侵害などでない限り、自己の信念に基づく主張は認められるべきだ。言論の自由を侵害、抑圧する」と、問責決議に対して共産党の議員が反対討論を行ったと紹介されていますが、まさにそのとおりでしょう。採決結果は賛成32、反対6ということで、賛成が32もあったことは驚きでしかありません。議員の発言権について、一体どういう認識をされているのでしょうか。

外から見ていると一種のいじめのようにも見える今回の件、その対象となっている議員は前回の選挙で新人ながら3位当選の女性(元市議)です。その辺からの何かややこしい事情もあるのだろうか?と事情の分からない者としては勘ぐりたくもなりますが、いずれにしても、誰が聞いても悪質な人権侵害の発言などではなく、単なる主義主張、考え方の違いからの発言なので、それをここまで袋だたきにする理由が分かりません。

私は、もともと地方議会議員の海外視察に関しては批判的な立場です。どうしても、そこに行って、実際に見聞きして、詳細に調査しないといけない、そして、その調査が今後の地方の発展、住民福祉の向上にとても役立つということに限って、さらに世間の現状に鑑みて、「今これは絶対必要不可欠な視察」として行われるべきものだと思います。

「当該訪問については、昨年7月に南カリフォルニア香川県人会会長が知事を表敬された際、同会長を介して、同財団の日本庭園に丸亀市の古民家を移築するプロジェクトが完成する本年秋頃に本県から代表団を派遣して貰いたい旨の要請を受け、本年7月に正式に招待状をいただいたものである。この招待に応じることは国際的礼儀に適うこと」ということで、そのことについて「もっともだ」と思う人もあれば「そんなことはない」と思う人がいるのは当然で、それを議会で議論することはいけないことなのでしょうか。

9585票の得票を得て3位当選してきた議員さんは、それだけの民意を背負って議席を得て、発言権を得ているわけです。議会・議員は、その権利が最大限尊重されるようにしないと、自らの首を絞めることになると思います。議員が自由に発言できない議会は無用の長物でしかありません。今回の発言について「暴言だ」と怒る人もあれば、快哉を叫ぶ人もあるわけです。悪意に満ちた差別的な発言なら話は別ですが、今回のケースはそうではないと思います。

問題の問責決議は香川県議会のホームページにアップされているので、御一読ください。

ただし、発言取消が決定されると、その発言はもとからなかったものとして扱われることになります。問責決議の中では問題となった発言をそのまま引用していますが、その取り消された発言内容がそのまま会議録やホームページで公開されると、発言取消の意味がなくなります。さらに、決議案上程時の趣旨説明や討論の中で取り消された発言が引用された場合、その箇所も取消の対象になります。したがって、発言取消に絡む議事や資料では、その辺に配慮することが求められます。